研究概要 |
本課題の目的は,ヨード造影剤を用いた造影CTでの組織造影効果のコンパートメント解析による組織性状の定量的診断法の開発である.研究期間内に以下の4研究を行った. 1.コンパートメント解析プログラム作成のための基礎検討 心臓CT画像をもとに,心筋造影効果と組織構築の関連を検討した.結果,心筋の造影効果は血管床・間質・細胞の相対容積と造影剤の要素間移動速度に対応し,コンパートメント解析での各指標の算出により定量的組織性状評価のできることが明らかになった. 2.腫瘍病変に対するプログラム適応の可能性の検討 胸部CT画像をもとに,縦隔腫瘍の造影効果と組織性状の関連を検討した.結果,腫瘍の定量造影効果は奇形腫<胸腺腫<ホジキン病<甲状腺腫であった.これは各腫瘍の推定組織構築と一致し,造影CTにより腫瘍病変の定量的組織性状評価が可能なことが示された. 3.コンパートメント解析プログラム作成と心筋組織構築指標算出 解析プログラム:dM/dt=A^*F+B^*M,A=(a^2/3/b)^*(a^*k2+b^*k1),B=-a^2/3/b^*k2 ここで,M:心筋増加CT値,F:大血管内腔増加CT値,a:組織血管床容積率,b:間質容積率, k1:血管床→間質の造影剤移行係数,k2;間質→血管床の造影剤移行係数. 上記プログラムを作成し,調整のうえ心筋の造影CTデータに応用して全指標を算出した.結果,正常心筋の平均値はa;8%,b;36%,k1;0.077,梗塞ではa;3%,b;58%,k1;0.112で,病理や解剖学の報告によく合致し,プログラムの妥当性が確認できた. 4.心筋組織構築指標とM/L値の対比検討 心筋の造影CTデータについて,上記の算出指標と組織構築の簡易推定指標であるM/L値;心筋Mと心大血管内腔Lの増加CT値比,を対比検討した.結果,対応する指標間にはいずれの組合せも良好な有意の正相関があり(R;0.71-0.92),M/L値の変換による簡便な組織構築指標の推定の可能性が示された.
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