研究概要 |
平成10年度には,子宮頸癌、卵巣癌を対象に、判断樹を用いた手法によって、MRI及び造影検査について医療経済学的検証を行った。対象は子宮頸癌42例、卵巣癌28例で、CT,造影CT,MRI,造影MRIを加えた場合の正診率を得た。それに基づいて初診後3年間にかかる総費用について算出した。診断樹に各正診率、転機、費用を入力し独自に開発したソフトウエアーを用いてMRIと造影MRIの費用効果を算出した。その結果、子宮頸癌の場合はMRIの追加により正診率は向上し、総医療費は軽減することが明らかとなり、また、卵巣癌についてはMRIによる節減効果はなかったが、造影MRIによる節減が認められ、これは造影によって小病巣が検出できるため総医療費を節減できたと考えられた。結果、MRIは婦人科疾患において費用対効果に優れていることを明らかにした。 平成11年度は,疾患および解析法を一般化した方法を用いて検討を行った.卵巣癌,子宮体癌を対象に,MRI・CT,造影の有無による診断能と,検査料を加えた総医療費を計算し,各疾患における画像診断の医療費対効果を分析した.また,仮想的な状態を設定し,そこから得られる便益にいくら支払う意志(Willingness-to-Pay)があるかを尋ねる方法である仮想市場法を用いて,高価であるが安全でより精度の高い検査・検査薬剤に,どの程度の付加価値を認めるかについても検討した. 卵巣癌,子宮体癌においては,MRIの追加,造影剤の追加は診断能の向上をもたらし,総医療費は軽減することが明らかになった.一方子宮頚癌では,MRIの追加は総医療費を低下させるが,造影の追加によって総医療費の増加を来した.次に,造影剤について,安全だが高値な非イオン性造影剤と,副作用が多いが安価なイオン性造影剤について,仮想市場法を用いて検討した.その結果,現在の薬価の差は,付加価値として患者本人が容認する程度であることが分かった.今後の研究方向としては,Willingness-to-Payに加えて,サービスを諦める場合に受け取る意志のある最小の金額(Willingness-to-Accept)を始め,新しい医療経済的手法を用いて,画像診断の費用対効果について研究を続けていく予定である.
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