研究概要 |
目的:早期アルツハイマー病における神経細胞脱落の検出を目的に、高解像度fast short inversion-time inversion-recovery(FSTIR)画像と高解像度プロトン密度強調(PDWI)fast spin-echo(FSE)画像を併用して、アルツハイマー病患者の海馬、嗅内皮質の磁化移動(magnetization transfer: MT)効果を計測した。 方法:MRIにて側頭葉内側部萎縮の明らかでないアルツハイマー病患者14例と対照群10例を対象に、1.5-T超伝導MR装置(Signa Horizon Lx, GEMS)を用い、昨年開発した高解像度FSTIR法に加え、高解像度PDW-FSEによるsingle slice, multislice画像を撮像した。FSTIR画像における解剖学的情報をガイダンスに海馬、嗅内皮質、上側頭回、帯状回、尾状核、深部白質、脳脊髄液の磁化移動化(magnetization transfer ratio: MTR)を算出し、尾状核のMTRでnormalizeし比較した。 結果:アルツハイマー病患者における海馬および嗅内皮質のnormalized MRT(0.97±0.05,0.98±0.06)は対照群(1.01±0.06,1.02±0.06)に対し有意に低下していた。上側頭回、帯状回、深部白質、脳脊髄液のnormalized MRTは対照群と比し著変を認めなかった。各構造のMTRの左右差に関してはアルツハイマー病群と対照群の間に明らかな差違を認めなかった。 結語:FSTIR画像とFSEプロトン密度強調画像を併用することによって、海馬、嗅内皮質のMT効果を計測することに成功した。側頭葉内側部の萎縮の明らかでないアルツハイマー病患者において、海馬、嗅内皮質のmTRは有意な低値を示し、神経細胞脱落,神経原線維変化に伴う変化を反映している可能性が示唆された。本法はアルツハイマー病の早期診断の一助となりうる可能性があると思われる。
|