研究概要 |
[はじめに] 我々は、躁鬱病家系(NIMH-CNG家系)の連鎖解析から染色体18番短腕(18p11.2)に感受性領域を見いだし、この領域から候補遺伝子myo-insitol monophoshatase2(IMPA2)を単離した。IMPA2遺伝子の局在部位のごく近傍は、最近精神分裂病でも連鎖と関連が報告された。今回の研究ではまず多型検索をし、得られた多型を用いて感情病並びに分裂病での遺伝子的解析をケースコントロールで検討した。[方法・結果] (1)解析対象としたサンプルは、感情病212名(単極性88名、双極性97名)、分裂病302名および正常対象者308名である。 (2)IMPA2遺伝子は8つのエクソンより成ることを明らかにしたが、それらがすべてエクソンと取り組むイントロン部分、およびプロモーター部分をシーケンスにより突然変異スクリーニングしたところ、以下の10箇所に変異を見だした。 (1)-466G>A(promoter),(2)-291C>T(promoter),(3)58G>A(exon 1),(4)IVS1-15G>A,(5)401T>C(Leu53Leu)(exon 2),(6)468C>T(His76Tyr)(exon 2),(7)IVS5+13-14insA(intron 5),(8)776T>C(Arg178Arg)(exon 6),(9)800C>T(Phe186Phe)(exon 6),(10)1079C>G(Thr279THR)(exon 8)。これらのうち、(6)のミスセンス変異はNIMH-CNG家系のみで検出され、日本人では300人以上調べたが検出されなかった。また(10)の変異は日本人ではすべてGであった。 (3)相関研究は(3)、(4)、(9)の多型を用いて行った。(3)はシーケンスにより、(4)と(9)はLightCyclerによる融解曲線分析よりタイプした。結果は、3つの多型すべてで分裂病と遺伝子型連鎖(genotypic association)(p<0.05)が認められた。感情病との関連は、(4)、(9)では検出されず、(3)については今だ検討中である。 [考察] 以上の結果から、IMPA2遺伝子は少なく多も日本人における分裂病発生に影響している可能性が高く、プロモーター領域以外には機能的変異が見いだされなかったので、今後プロモーター領域の変異と機能変化、それらのと分裂病態生理の関連追及していくことが重要と考えられる。
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