研究概要 |
本研究は三環系抗うつ薬の薬物動態とそれを制御している薬物代謝酵素の遺伝子変異との関連を解析し、難治性うつ病の治療アルゴリズムを開発することを目的とする。平成11年度は以下の成果を得た。 1.Nortriptyline(NT)によって治療中のうつ病患者で、研究内容に同意の得られた41名を対象とした。CYP2D6遺伝子型とNT血中濃度との関連を検討したところ、変異遺伝子を一つもつ個体、二つもつ個体ではもたない個体に比べて、NT血中濃度が有意に高かった(98.4±36.6(mean±SD)ng/ml/mg/kg,147±31.1,70.3±25.4)。NTとその水酸化代謝物trans-10-hydroxynortriptyline(EHNT)の血中濃度を検討したところ、変異遺伝子を二つもつ個体ではもたない個体に比べて、NTの水酸化率を示すNT/EHNTが有意に高値を示した(2.71±0.84,0.82±0.30)。 2.Desipramineによって治療中のうつ病患者で、研究内容に同意の得られた18名を対象とした。CYP2D6変異遺伝子を二つもつ個体は、変異遺伝子を一つもつ個体、もたない個体に比べてdesipramineの血中濃度が有意に高かった(530.4±215.2,176.2±62.3,118.1±63.9)。Desipramineとその水酸化代謝物2-hydroxy-desipramineの血中濃度を検討したところ、変異遺伝子を二つもつ個体では変異遺伝子を一つもつ個体や、もたない個体に比べて、desipramineの水酸化率を示すdesipramine/2-hydroxy-desipramineが有意に高値を示した(4.39±0.36,2.00±0.64,2.02±0.59)。 以上より、NT、desipramineの水酸化代謝経路にCYP2D6が関与していることが示された。
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