研究概要 |
外的要因であるウィルス感染の既往の有無が分裂病罹患のリスクを高めるか否かを検討するため,精神疾患罹患の素因が等しいと考えられる一卵性双生児の精神分裂病発症不一致例を含む精神分裂病患者,および健常対照者を対象として,分裂病との関わりが国内外で幾つか報告されているボルナ病ウィルス(BDV)及び一卵性双生児精神分裂病不一致例の患者に高率であったと予報的に報告されたペスティウィルスヘの感染既往の有無を調べ,精神分裂病罹患との関連を検討した。 長崎大学医学部倫理委員会において承認を得た後,対象者に研究の趣旨,方法について説明し,文書による同意を得た上で採血を行い,血清および全血RNAを得た。平成10年度より更に対象者数を増やし,分裂病患者27人と健常成人62人(一卵性双生児分裂病不一致例3組,一卵性双生児分裂病一致例1組,一卵性双生児健常対照3組,二卵性双生児健常対照1組を含む)とした。両ウィルスヘの感染既往の有無を調べるため,ウェスタンブロット法による抗BDV抗体の検出,及びnested RT PCR法による両ウィルスRNAの検出を行った。その結果,BDV RNA陽性3例(分裂病患者1例3.8%,健常対照2例3.4%),ペスティウイルスRNA陽性1例(健常対照者1例1.7%)であった。これらはいずれも非双生児であった。抗BDV抗体陽性例は検出されなかった。非双生児では,分裂病罹患者と非罹患者間での両ウィルスRNAおよび抗体陽性率にほとんど差はなかった。非双生児における両ウィルスRNAおよび抗体陽性率は高々4%弱であり,双生児が8組と少なかったため,双生児例において両ウィルスとも検出されなかったものと考えられる。今後さらに対象を増やして検討して行くことが必要である。
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