研究概要 |
老化に伴い早期に痴呆を呈するアルツハイマー病の本態を明らかにすることは,老化の機構やその制御の解明の一助となる。そこで病的老化であるアルツハイマー病のモデル動物を確立し,老化現象とその制御の解明に役立てることを研究目的とし,(1)ニーマンピック病C型マウスはアルツハイマー病のモデル動物となるか? (2)in vitroの実験系の確立を目指したニーマンピック病C型マウスの神経細胞培養 (3)骨髄移植療法は病的老化の制御に役立つか? について研究を行った。 アルツハイマー病で認められる神経原線維変化(NFT)は,ヒトではダウン症やニーマンピック病C型で認められており,ニーマンピック病C型のモデルマウスを用いて,このマウスがアルツハイマー病のモデル動物となるか否かに関して,形態学的に検討しヒトアルツハイマー病脳から抽出,精製されたリン酸化tau(ANT,Ab39)に対する抗体に陽性を示す細胞が検出され,電顕的には大脳皮質に所謂PHFが検出された。この結果ニーマンピック病C型マウスは,ヒトアルツハイマー病のモデル動物の有望な一候補であると考えられたが,このマウスの寿命は14週齢であり,早期に死亡するのが難点である。 in vitro系でのアルツハイマー病の神経細胞株の樹立を試みたが,新生仔マウス脳を用いた為か神経細胞よりむしろ線維芽細胞が主体で,グリア細胞が散在し,継代によって線維芽細胞のみが残り,成功しなかった。今後小脳神経細胞培養や薬剤を用いた間接的なin vitro系についても,検討する。骨髄移植による本病の神経症状の改善は認めないものの,脳内でも異常蓄積物の処理が行われる点が確認された。しかし移植したspm/spmは8週齢で検討しており,電顕ならびに抗ANT抗体検出の有無については今後の課題である。
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