研究概要 |
1.Bernard-Soulier症候群(BSS)患者で見いだした新規の遺伝子異常(既報,Br J Haematol 99 : 794-800, 1997)を持つ変異体を作成し、培養細胞をもちいて遺伝子発現実験をおこなった。FACSによる表面抗原の解析では変異体において膜表面GPlb/lX複合体の発現が殆ど認められなかった。免疫染色においてもGPlb/lX複合体の発現は著しくて低下しており、この結果より患者で認められた表現型の異常が我々の見いだした遺伝子異常によって惹起されることを証明できた(Thromb Res 95 : 295-302, 1999, Semin Thromb Hermost 26 : in press)。 2.凝固第X因子欠乏症患者の新規の遺伝子異常を同定した。本例では凝固第X因子遺伝子のintron D内のacceptor splicing siteにCTTの3塩基の欠失があり、polypyrimidine tractと呼ばれる特異な配列が正常なスプライシングに重要であることを示唆する症例であった。遺伝子変異の結果おこりうるスプライシングの異常をRT-PCR法で検討したが、正常例では認められる増幅バンドが患者では認められずmRNAの不安定性が原因と考えている(Brit J Haematol 102 : 926-938, 1998)。 3.凝固第Xl因子欠乏症患者の遺伝子異常を同定した。本例は凝固第Xl因子遺伝子のintron Jのdonor splicing siteのexon/intron接合部のGT→AT変異であった。この変異により惹起されるスプライシング異常をRT-PCRで法で検討し、変異の結果exon 10の3'側の20塩基がsplice outされていることが判明した。遺伝子発現実験で当該遺伝子変異によりmRNAの量的変化は起こさずに、凝固第Xl因子の産生低下が起こることを証明した。蛋白翻訳後の分泌過程に異常が存在することが証明された(投稿中)。 今後、1.で作製した発現ベクターを利用して、効率的な血小板膜蛋白GPlb/lX複合体の発現に関与するGPlb-beta鎖の構造機能相関を解析する予定である。
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