研究概要 |
薬剤耐性細胞株でグルコース6リン酸脱水素酵素(G6PD)の発現が高まっていることをふまえ、G6PD遺伝子が薬剤耐性に関与するかを直接証明するために、以下の実験を行った。ネオマイシンで選択可能なEukaryocyte系expression vector PCDNA 3.1(-)に1.6kbのcoding regionのみに短縮したG6PD遺伝子cDNAを組み込んだPCDNA3/G6PDと、それを反対方向に組み込んだPCDNA3/G6PD-Rを作成した。これらvectorおよびPCDNA3.1(-)を培養細胞cos7,K562にElectroporatorないしはTransferrifectionを用い、Transfectionを行った。G418で選択後2〜3週間後にstable transfectantを得た。PCDNA3.1(-),PCDNA3/G6PD-Rを導入した細胞ではmRNA,タンパクの発現に差はなかった。一方PCDNA3/G6PDを導入した細胞ではmRNAの発現は1.5〜2倍増強した。G6PDタンパクの活性は0.18μmole/mg protein,還元型グルタチオン6.4U/10^6cellsで、対照0.13μmole/mg,4.5U/10^6cellsと比し、やや高値であったが有意ではなく、LC90も10μM vs 5.5μMであった。臨床検体を用いたG6PDの検討では慢性リンパ性白血病(CLL)10例、既治療例6例でmRNA,タンパク発現の差はなく、また前リンパ球性白血病PL2例、悪性リンパ腫初発例3例、治療抵抗性の白血化症例3例でも差はなかった。以上より、G6PD遺伝子が薬剤耐性獲得に関与する直接的なdataは得られなかった。グルタチオン合成酵素が薬剤耐性に関与することはすでに報告されている。同遺伝子単独でtransfectした場合とG6PD遺伝子をco-transfectした場合とで薬剤耐性獲得の程度に違いがあるかどうかについては、興味がもたれるところである。また、G6PDの活性には個人差があることから、同一症例での治療前後のG6PD activityを検討する必要はあろう。
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