研究概要 |
我々は多くのヒト新鮮骨髄系,リンパ系造血器腫瘍細胞を用いて以下のことを明らかにしてきた。 1.骨髄系造血器腫瘍細胞の増殖とMAPK活性 造血因子による急性骨髄性白血病(AML)細胞の増殖促進は、アポトーシス抑制,細胞周期の進行促進の2つの要素が関与して成立している(I Murohashi,et al.Exp Hematol 25:1942,1997)。100症例の増殖様式から,自発コロニー形成がなく,造血因子,特にG-CSFに良好に反応するAML-M3(造血因子依存型),良好な自発コロニー形成があり,SCF,flt-3Lなどすべての造血因子に反応するAML-M4-6(autocrine増殖型),良好な自発コロニー形成があるが,造血因子反応性が不良なAML-M1,CML,myeloid crisis(autonomous増殖型)に分類可能であった。自発コロニー形成群は非形成群と比較するとMAPK活性は有意な高値を示した(I Murohashi,et al.manuscript,in preparation)。G-CSF,IL-3が増殖を促進しない場合はMAPKの有意な増加はほとんどなく(1/20;5%),増殖を促進する場合はMAPKの有意な増加は高頻度(16/17;94%)に認められた(I.Murohashi,et al.投稿中)。 2.リンパ系造血器腫瘍細胞とMAPK活性 約100例の種々のリンパ系造血器腫瘍細胞のMAPK活性は正常対象と比較すると全例有意な高値を示し,恒常的な活性化が確認された。Aktのリン酸化は75%の症例で確認された。多発性骨髄腫では,治療抵抗性,骨破壊,高カルシウム血症と相関性が見られた。MAPK活性は種々の造血因子で活性化され,PKCあるいはチロシンキナーゼ・インヒビターで部分的に抑制されたがwortmanninでは抑制されなかった。更に生存率とMAPK活性との関係を検討中である。 3.造血器腫瘍細胞のMAPK活性と血管新生因子遺伝子発現 様々な造血器腫瘍により異なった血管新生因子が産生される事が明らかにされている。MAPKは造血細胞のautocrine増殖血管新生因子遺伝子発現接着因子のシグナル伝達matrix metalloproteinase産生に重要であり,造血器腫瘍細胞の増殖進展を促進すると予測される。我々は造血器腫瘍細胞による血管新生因子,血管新生抑制因子の遺伝子発現のMAPKを介した調節をサリドマイドを含めて検討中である。
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