研究課題/領域番号 |
10671004
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
腎臓内科学
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
林 晃一 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (80164937)
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研究分担者 |
徳山 博文 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (50276250)
本多 正典 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (20270514)
久保田 英司 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (40255451)
松田 洋人 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (80245498)
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研究期間 (年度) |
1998 – 1999
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研究課題ステータス |
完了 (1999年度)
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配分額 *注記 |
3,000千円 (直接経費: 3,000千円)
1999年度: 1,200千円 (直接経費: 1,200千円)
1998年度: 1,800千円 (直接経費: 1,800千円)
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キーワード | アンジオテンシン変化酵素阻害薬 / アンジオテンシン受容体拮抗薬 / 腎臓 / 輸入細動脈 / 輸出細動脈 / 腎血行動態 / アンジオテンシン変換酵素阻害薬 |
研究概要 |
腎障害の進行は、アンジオテンシン変換酵素阻害薬(以下、ACE-1)を用いてアンジオテンシンII(以下、AII)の生成を抑制することにより、その進行速度を遅延しうることが報告されている。さらに近年アンジオテンシン受容体拮抗薬(以下、AIIA)が開発され、降圧薬としての有用性のみならず心不全でも有用であると報告された。しかしながら、腎疾患におけるAIIAの有用性、ならびにACE-1と比較してどちらが有効であるかについては明らかでない。本研究ではAIIAとACE-1との腎作用の比較において、(1)ACE-1によるキニン・NO産生亢進が腎保護作用に関与するか、(2)AT2刺激は腎血行動態ならびに腎保護作用を示すか(3)AT2が関与するのであればどのような機序が関与するかについて、腎血行動態・微小血行動態を含む生理学的観点から検討した。さらにその機序の詳細な検討のため、腎内オートクリン・パラクリンの動態を検討した。 犬の腎臓ではAII産生経路としてACE経路と、キマーゼを含む非ACE経路が存在する。それらのAII産生に関わるin vitroでの相対的比率は、腎組織の生化学的検索により8:2(=ACE:非ACE)であった(C.F.,左心室では4:6、大動脈では7:3)。さらに、生理的にAII生成における相対的役割の検討目的で、ACEで変換されずキマーゼで変換を受けるアンジオテンシンIアナログ([Pro^<11>、D-Ala^<12>]-アンジオテンシンI)を静脈内に注入し、アンジオテンシンIと比較したところ、アンジオテンシンIの30-50倍で腎血流の変化が認められ、100倍で血圧上昇が観察された。したがって健常イヌの腎臓ではAII生成に関して、非ACE活性の関与は少ないと考えられた。次にACE-1(シラザブリル)を急性投与し、腎組織内のキニン、NOの増加を観察した。さらに腎微小循環上、腎皮質表層の糸球体において輸出細動脈優位の拡張を観察し、この反応はキニン受容体拮抗薬でNO産生上昇の消失と血管拡張反応の減弱を見いだした。一方、AIIA(E-4177)の投与では腎間質内のキニンならびにNO生成亢進は観察されなかった。この両薬剤の急性投与による反応では、正常腎においてはACE-1の法がAIIAよりも糸球体内圧低下作用が強いのではないかと考えられなかった。さらにACE-1によって腎組織内ではキニン濃度の上昇が観察され、それに伴ってNO産生が亢進したが、NO合成阻害薬ならびにAIIAを前処置した状況下でも、ACE-1による血管拡張が観察された。この拡張反応はEDHF合成阻害薬で抑制された。これらの結果より、ACE-1に伴って蓄積されたキニンはNO以外の脈管作動物質を誘導させて、腎微小血管拡張作用を示すことが示唆された。 これらの成績を踏まえて、次年度の研究では、臨床応用を視野に入れて、慢性的にACE-1あるいはAIIAを投与し、腎皮質ならびに髄質におけるブラジキニン濃度の定量を行った。対照期ならびに各薬剤投与4週後に腎組織を腎生検針を用いて採取し-80℃にて凍結保存し、後日測定を行った。その結果、急性投与で観察されたACE-1による腎組織内キニン濃度の上昇は、慢性投与では皮質・髄質ともに観察されなかった。さらにAIIA投与における検討においてもブラジキニン濃度の変化は認められなかった。 以上の結果より、生犬に対してACE-1ならびにAIIAの慢性投与は腎間質のブラジキニンの濃度に影響を与えないことが示唆された。この結果は、従来ACE-1がブラジキニンを増加させAII作用抑制作用以外の付加的な作用を有するとされていたが、慢性期ではその反応が減弱あるいは消失する可能性が示唆された。
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