近年、Fcレセプター(FcR)が免疫複合体を介する炎症カスケードにおいて重要な働きをしていることが明らかになった。今までに我々は、機能的FcRを欠くFcRγ鎖欠損マウス(γ(-/-)と抑制シグナルを伝達するFcγRIIBのノックアウトマウスを用いることにより、糸球体腎炎においてもFcRが重要な役割を担っていることを示した。 昨年度より我々は、1)SLEモデルえあるNZB/NZW(B/W)F1マウスのNZBおよびNZWそれぞれのマウスに、FcRγ鎖欠損マウスを交配させ、γ鎖に関して3種類のB/WF1マウス(B/WF1-γ(-/-)、γ(+/-)、γ(+/+))を作成し、その自然経過を観察した。その結果、B/WF1-γ(-/-)において経過中に、腎炎の発症は認められなかった。さらにB/WF1-γ(+/-)マウスではB/WF1-γ(+/+)に比べて、腎炎の発症時期は遅れ、有意に延命した。2)野生型マウス(WT)に、γ鎖欠損マウスの骨髄を移植したキメラマウス(γ/W)を作成後、馬杉腎炎を惹起した。1200radの放射線前処置を施した後に骨髄移植したγ/Wマウスは抗血清投与150日後でも、末梢血白血球上にFcRの発現を認めず、腎炎は惹起されなかった。それに対して800radの放射線前処置を施した後に骨髄移植したγ/Wマウスでは、70日目頃よりWTマウスの骨髄の回復を認め、末梢血のFcRに関してはγ(-/-)とWTの混在した状況となった。腎臓においては徐々にループス腎炎様の組織学的変化が観察された。 以上より、FcRの量的な違によって糸球体腎炎(特にループ腎炎)の病態に明白な違いが示され、このことは腎炎の発症あるいは進展憎悪などを考える上で興味深いと考えられた。
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