研究概要 |
本研究では,まず胎児水腫や胎児心不全の症例で,良好な胎児心電図の得られる設定条件を検討した。胎児心電図では心拍が速く高周波である。そこで,母体の低周波成分および雑音を胎児の高周波成分から分離するためのシステムを確立した。生体電位アンプを増幅し,アナログフィルターを通して雑音を減少させた。そして,A/D変換ボードを用いてデジタル信号に変換した。その後,母体心電図からのR波をtriggerとして加算平均心電図を取り出した。最後に母体心電図を引き算することにより,胎児心電図のみを残し,コンピューター上に表示した。 良好な胎児心電図波形を得るために工夫したのは以下の点であった。まず,母体の雑音の軽減のために,母体腹壁にクリームを厚く塗布した。電極にはAg/AgC1電極を用いた。低周波帯フィルターとしては2Hzが胎動や呼吸による変動が少なく適していた。更に,母体心電図の差し引き時間幅に関しては,母体心電図のR波を中心に±400msecを時間幅とした。使用した増幅装置は感度20μVからであるが,最近,更に高感度(0.3μV)のものに変更し,より良好な心電図記録が可能となった。アンプはデジタル表示できるもので,域値設定・積分増幅できる支援ソフトの使用を開始し,データの保存を容易なものにした。 臨床応用としては,胎児不整脈・QT延長症候群などの胎児で検討した。胎児の心室性期外収縮やQT延長症候群の診断が可能であった。特に後者は胎児心エコー図でも診断不能であり,この方法が極めて有用であった。
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