研究概要 |
[目的]近年リアルタイムにPCR産物の検出を行えるシステム(TaqMan PCR)が開発され,遺伝子DNAの定量測定に大きく貢献している.我々はこのシステムが標的DNAの検出感度と特異性に優れており,しかも短時間に簡便に行えることから,単離胎児有核赤血球を用いPEP(Primer Extension Preamplification)により全ゲノム増幅されたDNA産物からの検出にも有用であると考えβ-actin,SRYのDNA領域の検出について検討を行った. [方法]患者より同意を得,男性胎児血液標本よりマイクロマニプュレータにより単離した胎児有核赤血球20個についてZhangらの方法によりPEPを行い,その増幅産物からβ-actin,SRY領域の検出をTaqMan PCRを用いて行った.同時にPEPにより標的領域についてどの程度のDNA増幅がみられるか検討した.β-actinの増幅はTaqMan PCR Kitを用い,SRY領域の増幅はLoらの方法により行った. [成績]β-actin領域は20細胞中11細胞(55%)に,SRY領域は17細胞中6細胞(35%)に検出された.SRY領域が検出された6細胞はすべてβ-actin領域も検出された.また各領域が検出された細胞において,各々の単離細胞当たりのPEP増殖コピー数はβ-actin領域では0.5-59.5(平均4.8),SRY領域では2.4-278.4(平均17.8)であった. [結論]マイクロマニプュレータにより単離した胎児有核赤血球を用い単一遺伝子領域(β-actin,SRY領域)のPEP-TaqMan PCR分析を行い定量的な検出が可能となった.その結果PEPの増幅効率がはじめて明かとなった.本法は微量DNA検体の検出に有用であり,母体血中胎児有核赤血球によるDNA診断のための強力な分析手法と考えられた.
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