研究概要 |
2型糖尿病発症機序の解明のため、糖尿病モデルマウスである秋田マウスについて異常遺伝子同定の研究を開始した。しかし研究の途中で1つの可能性としてインスリン遺伝子異常の発見が共同研究者(小泉ら)より報告された。しかしこの異常では人においての常染色体優性遺伝の糖尿病発症は説明できないと考えられた。そこで2型糖尿病に一つの特徴であるインスリンの初期および追加分泌障害に関係する蛋白の遺伝子をランゲルハンス島から同定するため、秋田マウス(糖尿病)、正常と飢餓のラットの単離ランゲルハンス島からそれぞれに発現する遺伝子のサブトラクションを行った。(飢餓動物の意義-水分と電解質を与えて4、6、8、10、12日に腹腔内OGTTを行い、血糖とインスリンを測定してみると、10、12日でインスリン分泌が極めて低下することが明らかになった)。サブトラクションによって正常のランゲルハンス島にありインスリン分泌が低下する状態でランゲルハンス島で低下あるいは消失する遺伝子が数十種類得られ、その遺伝子の配列の同定を行って、重複や短小、ハウスキーピング遺伝子を除き以下のものを得た。得られた遺伝子:核酸データベースに無いものはRGS10,Thyroid receptor,GA binding protein,Death association protein,Hypothetical protein,C-ternminal binding protein,Motor protein,TSC2,mSlo,Aldehyde reductase,Cortactin,Chip,KIAA0788,KIAA1014,EST201725,EST203522,EST226122,EST238027,EST207832,EST220962であった。この中で膵臓に発現の報告されているのはTSC2のみであった。ランゲルハンス島にはインスリン、グルカゴン、ソマトスタチン、ppを作る細胞があり、上記の遺伝子がインスリンを作るB-細胞に局在するか否かを確認する必要がある。そこで、In situハイブリダイゼーション法により転写産物の膵臓ランゲルハンス島での局在の確認を開始した。インスリンの遺伝子をIn situハイブリダイゼーション法のコントロールとして行っているが、まだ、数種類の検索が終了した段階でB-細胞に局在した遺伝子を同定できていず、検索を続けている。in situハイブリダイゼーションにより転写産物の局在が確認された後、RT-PCRにおいて対照と発現の差が確認できれば、インスリン分泌障害に関係する2型糖尿病発症機序の解明に役立つと考えている。
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