研究課題/領域番号 |
10671071
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
代謝学
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
梶本 佳孝 大阪大学, 医学系研究科, 助手 (60301256)
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研究分担者 |
松久 宗英 大阪大学, 医学部附属病院, 医員
山崎 義光 大阪大学, 医学系研究科, 助教授 (40201834)
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研究期間 (年度) |
1998 – 1999
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研究課題ステータス |
完了 (1999年度)
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配分額 *注記 |
2,900千円 (直接経費: 2,900千円)
1999年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
1998年度: 1,800千円 (直接経費: 1,800千円)
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キーワード | インスリン非依存型糖尿病 / 転写因子 / ブドウ糖毒性 / 抗酸化剤 / インスリン遺伝子 |
研究概要 |
本研究は、慢性高血糖に際し認められるglucose toxicityをターゲットとしたNIDDMの新しい予防・治療法の開発に繋がる手掛かりを得るため、インスリン生合成低下の背景に存在する分子機構の解明を目指してきた。当初の検討により、MIN6細胞においてインスリン遺伝子転写に関わるNeuroD/Beta2およびPax-6に関してAntisense oligonucleotide法およびSomatic Knockout法による抑制を試みたが、前者の方法では有効な発現抑制が認められず、また、後者の方法では長期培養のために細胞特性が(knockoutと無関係に)spontaneousに変化してしまうことが明らかとなり、実験系として不適当と考えられた。 こうした結果を受けて、方針を若干変更し、in vivoにおける抗酸化剤投与が糖尿病発症に及ぼす影響を評価し、その際に期待されるインスリン生合成改善とともに活性の改善する転写因子を検索してきた。用いたモデルは、肥満NIDDMモデルであるC57BL/KsJ-db/dbマウスで、これに抗酸化剤であるN-acetyl-L-cysteine(NAC;一部、vitaminC、vitaminEを併用)、あるいはprobucol(PBL)を餌に混ぜて6週齢より投与し、耐糖能や膵β細胞機能の変化を評価した。 16週齢において腹腔内グルコール負荷試験(1g/kgグルコース)を施行した結果、NACまたはPBL投与群において耐糖能の改善及びグリコース応答性インスリン分泌の改善を認めた。Vitamin C、Eは、単独では効果を認めなかったが、NACとの併用で効果増強が認められた。一方、コントロールマウスであるC57BL/KsJマウスに抗酸化剤を投与しても耐糖能の改善が認められなかった。このような結果から、C57BL/KsJ-db/dbマウスにおいて認められた抗酸化剤の効果は高血糖とリンクして発揮されたものであることが示唆された。加えて、16週齢においてインスリン抗体を用いて免疫組織染色を施行した結果、NACあるいはPBL投与群では膵島massが有意に保たれ、また、インスリンの脱顆粒の程度が低いことが認められた。膵におけるインスリン含量も有意に高かった。興味深いことにPBL投与群では膵島細胞における中性脂肪含量が著名に低下し、lipotoxicityもあわせて軽減させたものと考えられた。一方、転写因子に関しては、PDX-1の発現がdb/dbマウスでは著明に減少していることを認めた。この減少は、糖尿病進展に伴うインスリン含量の低下とともに進行性に認められた。加えて、NACあるいはPBL投与により、インスリン生合成の改善とともにPDX-1の発現の回復が認められたことから、酸化ストレスに伴うPDX-1の活性低下が2型糖尿病で認められるインスリン生合成低下に関与することが示唆された。以上の結果から、糖尿病状態において認められる膵β細胞障害の原因として活性酸素とそれに伴うPDX-1活性低下が関与し、抗酸化剤投与によって酸化ストレスが軽減されることが膵β細胞を糖毒性から保護することが示された。
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