研究分担者 |
佐々木 輝昌 山口大学, 医学部・附属病院, 医員(臨床)
井上 寛 山口大学, 医学部・附属病院, 助手 (20294639)
岡 芳知 山口大学, 医学部, 教授 (70175256)
中井 一彰 山口大学, 医学部・附属病院, 医員(臨床)
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研究概要 |
膵β細胞の発生,分化,再生及び正常な機能の維持を規定する因子として転写因子の役割は重要である.我々はβ細胞の発生に必須と考えられる転写因子であるPAX4について,マウス及びヒオのcDNAの全長をクローニングし,その構造を明らかにした.また,最近MODY3遺伝子として同定されたHNF-1αのdominant negative変異体をアデノウイルススベクターを用いてマウスインスリノーマ由来のMIN6細胞に過剰発現し,内因性のHNF-1αを抑制しインスリン分泌能について検討した.その結果,β細胞ではHNF-1αの機能障害により,arginineによるインスリン分泌増強効果の選択的な障害をきたすことが明かとなった.他の側面からのアプローチとして,β細胞の"mass"の異常をきたす疾患について発症の分子メカニズムの解析を行った.Wolfram症候群は1型糖尿病に視神経萎縮,感音性難聴、尿崩症などを合併する常染色体劣性遺伝性疾患である.患者のラ氏島ではβ細胞が選択的に消失する.我々はWolfram症候群の原因遺伝子WFS1を同定した.WFS1遺伝子産物は890のアミノ酸よりなり,その構造より膜蛋白と考えられるが,機能は明かではない.その機能の解明のための第1段階として,中枢神経組織内及び細胞内での局在の解析を行った.WFS1蛋白は,マウスの脳では,嗅結節,扁桃体,梨状皮質及び海馬(CA1)に強い発現が認められた.その他,弓状核や大脳皮質第2層にも発現が認められた.細胞内では,WFS1蛋白は主としてmicrosome分画,特にERに局在することが示唆された.また,新生児期に高インスリン血症性低血糖症をきたすpersistent hyperinsulinemic hypoglycemia of infancy(PHHI)患者ではβ細胞の過形成をきたすことが知られている.PHHI患者の一部ではATP感受性カリウムチャネルを構成するスルフォニル尿素剤受容体(SUR1)遺伝子やKir6.2遺伝子に変異が同定されている.我々は日本人のPHHI患者においてSUR-1遺伝子の解析を行い,3種類の変異を同定した.さらにこれらの変異SUR1により再構成されるATP感受性カリウムチャネルの機能解析を行い,そのうちの1つの変異(R1420C)では,アデニンヌクレオチドのSUR1への協調的結合が障害され,そのためにATP感受性カリウムチャネルの活性化(開放)障害をきたし,持続性のインスリン分泌を引き起こしていることが明かとなった.
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