研究概要 |
糖尿病母体からの新生児は奇形の発生が高く、その発生を抑制することが近年重要な課題となっている。器管の形成過程において、アポトーシスが重要な役割を演じることが知られている。近年アポトーシスを促進、抑制的に働く癌遺伝子が発見されてきたが、Baxはアポトーシスを誘導し、Bcl-2は抑制的に働くとされる。糖尿病における奇形の発生とアポトーシスの関与およびBax,Bcl-2の発現を検討した。 少なくともmating一週間前に生理的食塩水およびstrepotozotocinを投与し、正常および糖尿病ラットの作製後、雄雌同一ケージで一晩飼育(mating)し、正常および糖尿病ラットを作成した。主な器官形成期に相当する妊娠第9,10,11日にembryoを取り出し、4%paraformaldehydeで固定し、4〜5μmの切片を作成した。Terminal deoxynucleotidyl transferaseを作用させ、peroxidase標識抗biotion抗体を用いて免疫組織学的に検出した。Bax,Bcl-2の発現はBax,Bcl-2抗体を用い、免疫組織学的に検出した。妊娠第9,10,11日のembryoにおいては、アポトーシスは原始腸管、神経管、体節、眼胞、咽頭弓に認められた。それに一致してBaxの発現が認められた。しかし、BaxとBcl-2が同時に強く発現している場合は、アポトーシスはほとんど認められなかった。正常ラットのembryoに比較して妊娠糖尿病ラットのembryoではアポトーシスは原始腸管、神経管、体節、眼胞眼胞、咽頭弓に多数認められた。それに一致して強いBaxの発現が認められた。Bcl-2の発現はほとんど認められなかった。すなわち、正常ラットのembryoにおいて、Baxが発現し、生理的なアポトーシスが生じ、正常な器官が形成される。一方、糖尿病ラットのembryoにおいては、Baxが強く発現し過剰なアポトーシスが生じ、器官分化が障害され、奇形が発生することが推定された。
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