研究概要 |
筋肉組織におけるブラジキニン作用に関する検討では,イヌ大腿筋及びL6 myoblastにおいてブラジキニン受容体(B2型)の存在を証明し,インスリン存在下でブラジキニンが濃度依存性に糖取り込みを増加すること、及び4型糖輸送担体の細胞内から細胞膜へのトランスロケーションを増加させることを示した。運動時のブラジキニンの作用に関する臨床研究では,自転車エルゴメーターによる運動負荷時の血中ブラジキニン濃度の変化を測定した結果,耐糖能正常群,2型糖尿病血糖コントロール良好群,2型糖尿病血糖コントロール不良群の順に,運動による血中ブラジキニン濃度の上昇が低下することを認めた。動物実験において,血中ブラジキニン濃度は,正常ラット及び軽症糖尿病ラットで運動により有意に上昇したが,重症糖尿病ラットでは上昇が認められず,臨床研究の結果を確認した。また,正常耐糖能ラットにおける運動時の4型糖輸送担体トランスロケーションの検討では運動ラット群では安静ラット群に比し有意に増加したが,運動+B2受容体阻害剤処理ラット群では運動ラット群に比しB2受容体阻害剤の前処理により,その増加が抑制されていた。以上より,運動後の骨格筋におけるインスリン感受性増強機構に運動中に増加したブラジキニンが関与する可能性が示唆された。
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