研究概要 |
AOM誘発大腸発癌抑制と転移抑制作用が明らかになったアップルペクチンについて、メカニズムの一つとして活性酸素に対する抑制効果を明らかにするため、アップルペクチン由来のオリゴ糖、特に、重合度別の抑制効果と加熱処理別およびメトキシル化度別による抑制変化の分析を行った。 アップルペクチン由来のオリゴ糖はbioreacterによる分解産物を用い、平均重合度により、S,M,L,LLの4群に分け、S分画においては加熱時間別、加熱温度別に分析した。高メトキシルと低メトキシルについても加熱処理前と加熱処理後とに分けた。試料は2.0mg/mlに調製して使用した。活性酸素は、O_2と・OHを測定の対象とした。・O_2の発生系には、HPX-XOD反応を用い、・OHの発生系にはFenton反応を用いた。測定方法には、ラジカルをトラップ剤で捕捉し、ESR法を用いた。信号強度は、内部標準であるMnOに対する相対強度として算出し、超純水をコントロールとして用い、活性酸素抑制率を求めた。SOD標準キッドを用いて、検量線の作成を行い、相当する濃度を試料のSOD様活性とした。 高メトキシルと低メトキシルのS,M,L,LLの分画を加熱したものはすべて・O_2及び・OH抑制率が高くなった。高メトキシルの・O_2抑制率(%)は121℃30分の加熱処理により、Sは25.7より50.4、Mは20.5より36.9、Lは12.9より25.4、LLは19.7より31.9と増強し、・OH抑制率(%)は、Sは73.1より87.1、Mは20.4より46.5、Lは18.5より40.1、LLは6.8より21.9であった。低メトキシルの・O_2の抑制率(%)はSは19.6より56.1、Mは20.6より43.8、Lは14.1より34.8、LLは10.0より25.8に、・OH抑制率(%)は、Sは39.5より91.2、Mは39.0より85.2、Lは51.8より70.5、LLは24.8より40.3であった。SOD様活性も加熱により増強した。S分画の加熱時間別では、時間とともに増強し、温度別では・OH抑制率は120℃より急激に増強した。・O_2抑制率でも、120℃に加熱したものが有意に高くなった。 【総括】 アップルペクチン由来のオリゴ糖重合度別による各分画の120℃加熱処理は・O_2及び・OH抑制率の著明な増強が明らかにされた。活性酸素抑制効果は、小さい重合度がより高く、また、高メトキシルと低メトキシルでも120℃加熱処理したものが抑制効果がすこぶる高くなることが初めて明らかにされた。特に、S分画には顕著な活性酸素抑制を認め、今後、in vivoによる効果を検討する予定である。
|