研究概要 |
低分子量G蛋白質ファミリーは、細胞増殖、細胞骨格の制御、細胞内輸送などの関与が考えられている。これらはいずれもGTPと結合することにより活性化され、また内因性のGTPase活性により結合したGTPをGDPに水解し非活性型となる。そのひとつであるRalはRasの下流に位置しており、シグナル伝達上RalBP1(Ral binding protein 1)を介してCdc42/Racを制御し、細胞骨格形成の関与が推測されている。そこでRasシグナル伝達経路の解明のために、RalBP1に結合する新規のシグナル伝達蛋白質のクローニングをおこなった結果Reps蛋白(RalBP1 associated eps 15 like library)を得ることができた。蛋白は743個のアミノ酸からなり、EGF受容体基質様領域(eps15)、EF-handモチーフ、SH3領域が結合すると思われる2ケ所のプロリンに富む領域および3個のMAPK基質領域を有していた。またCOS7細胞を用いた検索から、EGF受容体のシグナルをうけてReps蛋白のリン酸化が誘導される経路として1.EGF受容体からのシグナルがアダプター蛋白を介してReps蛋白に伝達される経路、2.EGF受容体のシグナルからRas蛋白が活性化され、ついでRal,RalBP1(Ralbinding protein)と複合体を形成し、その後Reps蛋白のTyrosineリン酸化が生じる2経路が示唆された。次にPC12細胞にNGF刺激を加えたところRal signaling pathwayはRaf-ERK,P13 kinaseとは逆のdifferentiationが確認され、またRal-GTPレベルとrAs-GTPレベルの増加に時間差が生じることが認められたことよりRas以下に伝達される情報がRal,Raf-ERK,P13 kinaseのバランスによって細胞内の分化度、細胞形態などを決定する可能性が示唆された。 以上よりRalシグナル経路はendocytosis,cytoskeltonなどをはじめ、シグナル伝達解明に重要なPathwayであることが認められた。
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