研究概要 |
1)BALB/c由来線維肉腫細胞CMS7にマウスHER2/neuを遺伝子導入した細胞株CMS7ME(三重大学、珠玖 洋教授より供与)をBALB/c皮下に接種し発育した腫瘍より、腫瘍由来ストレス蛋白質gp96,hsp90,hsp70を抽出し、別のBALB/cマウスの皮内に投与(1週間隔で2回)した。2週後、CMS7MEをマウス皮下に接種して腫瘍細胞の生着、増殖速度、生存率をコントロール群(PBS皮内投与)と比較検討した。CMS7ME由来gp96,hsp-70投与群において、腫瘍増殖抑制効果、生存期間の延長を認めた。hsp90投与群においては有意な変化を認めなかった。 2)BALB/cマウス直腸内にN-nitroso-N-methylurethaneを注入して得られた大腸癌株CT26を皮下接種し発育した腫瘍より同様にgp96,hsp90,hsp70を抽出した。さらに、BALB/cマウス正常肝よりgp96,hsp90,hsp70抽出し、CT26抗原ペプチドAH1とin vitroで結合させたcomplexを作製した。これらCT26腫瘍由来hspもしくは正常組織由来hspと抗原ペプチドの複合体を1)と同様に免疫した場合の抗腫瘍効果を検討した。CT26腫瘍由来gp96投与群において腫瘍増殖抑制傾向を認めたが有意差を認めなかった。CT26腫瘍由来hsp90,hsp70投与群においては変化を認めなかった。正常肝由来gp96-AH1 complex投与群において有意な腫瘍増殖抑制効果、生存期間の延長を認めた。しかしながらCT26腫瘍由来gp96投与群、正常肝由来gp96-AH1 complex投与群においてもAH1特異的CTLの誘導は確認できなかった。 3)CT-26由来gp96をマウス脾臓由来樹状細胞にパルスしたのち免疫した際の抗腫瘍効果を、既知の抗原ペプチドAH-1を直接パルスした樹状細胞を用いた場合と比較した。CT-26由来gp96をパルスした樹状細胞により免疫した群においてより強い腫瘍増殖抑制効果が観察された。gp96の介在により、腫瘍特異抗原がより効率的に提示された可能性が示唆された。
|