研究概要 |
ヒト乳癌細胞培養株(MDA-MB-231,MDA-MB-435,MKL-4細胞)におけるインテグリンα_vβ_3の発現を免疫組織染色(抗α_vβ_3モノクローナル抗体:LM609,Envision法)によって検索した結果、MDA-MB-231,MDA-MB-435には強い発現をみとめたがMKL-4細胞の発現は弱かった。軟部組織と骨組織内での増殖部位による発現の差異はみとめられなかった。Flowcytometryを用いた検討でもα_vβ_3発現率はそれぞれ82%、92%、26%であり同様の結果が得られた。乳癌臨床検体材料による免疫組織染色では、骨転移(あるいは再発)を有する群の腫瘍組織に11/19例(58%)と多く発現していたのに対し、無しの群では7/18例(39%)であった。また、ヌードラットを用いた骨転移モデルにおける骨転移形成率はMDA-MB-231:9/11例(82%),MDA-MB-435:8/10例(80%),MKL-4:1/9例(11%)で前二者の乳癌は有意に骨転移を生じやすい細胞株であることが証明された。そこで、α_vβ_3の抑制が骨転移に及ぼす影響を調べるためにRGDペプタイドを有するechistatin(20ug/kg/min)を、5分間ラットに投与したところMDA-MB-435を用いた骨転移モデルでは、投与群/対象群で、1.1±1.3/4.0±0個.、面積は0.6±1.2/2.8±1.6mm^2と有意に骨転移による溶骨性変化が抑制されていた。RT-PCRでMDA-MB-231,MDA-MB-435,MKL-4のα_vβ_3メッセージの発現を調べると前二者ではα_vとβ_3が共に強発現していたが、MKL-4ではα_vのみ発現しておりβ_3は発現していなかった。骨転移とα_vβ_3の発現は相関関係にあることが示され、α_vβ_3の抑制によって骨転移が抑制される可能性が示唆された。骨転移の治療戦略に寄与する知見であると考えられた。
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