研究概要 |
閉塞性黄疸(閉黄)時における肝細胞障害機序の一つと考えられる好中球の肝組織内浸潤現象につき、ラット閉塞性黄疸モデルによる検討を加え以下の知見を得た。 【実験方法】 正常ラットおよび総胆管結紮により作成した閉黄ラットから肝組織を摘出し組織抽出液を分離した。 正常および閉黄ラット末梢血好中球を分離後,正常肝抽出液、閉黄肝抽出液、さらにはケモカインIL-8 familyの一員であるCINC/Gro,その他の走化性惹起物質(fMLP,PAF)に対する走化性を検討した。 【結果】 (1)閉黄好中球は正常好中球に比べ,その運動性の亢進を認め、閉黄肝抽出液に対して10μg/mlをピークとする濃度依存性の走化反応を示し、正常肝抽出液に比し走化性の亢進をみた(p<0.01)。fMLP, PAFに対する走化反応も閉黄好中球で亢進した。 (2)CINC/Groに対する走化性は、閉黄好中球は正常好中球に比しより低濃度で走化性亢進を示し(p<0.05)、より感受性が高いことが示された。 (3)抗CINC/Gro抗体にて閉黄好中球の走化性は一部抑制された(p<O.05)。 【知見まとめ】 閉塞性黄疸肝組織内好中球浸潤の機序に関して,好中球側因子および肝組織側因子に分けて検討すると,閉塞性黄疸時には末梢血好中球の運動能亢進と共に,閉黄肝組織中にはケモカインCINC/Groを含めた複数の遊走惹起物質(ケモアトラクタント)の産生亢進が起こっていることが示唆された。この知見は全身的あるいは局所的な好中球走化反応抑制による組織障害軽減を目指した新たな治療法に繋がる可能性が期待される。
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