研究概要 |
胃癌に対する拡大リンパ節郭清術では、自立神経が犠牲となり切除されるために、消化管の消化吸収能、消化管運動が著しく障害される.どのような機能障害が実際に起こっているのか動物実験および臨床的検討を行った. 臨床的検討 大内蔵神経を温存した拡大リンパ節郭清手術(大動脈周囲リンパ節郭清)後の小腸の収縮運動は,食後では収縮と弛緩が観察され,健常者と同様の収縮運動が観察された.空腹期においては,Phase IIIと呼ばれる強収縮運動が漸次肛門側小腸へと伝播し正常小腸と同様であった.Barium mealを用いたX線透視下の小腸輸送能も蠕動収縮に伴い内容の輸送が観察された.一方,内臓神経も切除した拡大リンパ節郭清術後の小腸運動は,食後期にはspastic contractionが主体となり,小腸内容の輸送もこの攣縮に伴って停滞し,ときに内容輸送が終末小腸へ急速に移動する小腸におけるmass movementが観察された.このことが,拡大リンパ節郭清術後の経口摂取不良,難治性下痢と関連深いものと考えられた. 実験的検討 イヌを用いたstrain gage transducerによる消化管運動測定を行った.その結果,迷走神経切除をしても,小腸の運動機能はおおむね良好に保たれ,小腸内容の輸送も健常小腸と同様であった.内臓神経と迷走神経の両外来神経を切除すると,臨床例と同様に,小腸の収縮運動は,spastic contractionが認められ,Phase III収縮も有意差をもって頻繁に出現した.
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