研究分担者 |
高山 澄夫 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (50197216)
宮川 郎 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助手 (10277080)
山本 尚 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助手 (10266695)
羽生 信義 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (30189592)
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研究概要 |
生理的な状態において,Bauhin弁(ileocolonic junction:ICJ)には、小腸内容の結腸への通過を調整し、結腸内容の回腸への逆流を防止するなどの括約筋機能がある.この研究の目的は、胃癌に対する胃全摘手術後に回結腸を再建臓器として用いた症例を対象として,ICJが再建臓器内で括約筋としての機能を保持するかどうかを確認することである.(方法)X線透視下に,スリーブセンサー付きの内圧測定用カテーテルを経鼻的に挿入し、スリーブがICJに位置するように固定した.サイドホールはスリーブの口側では,食道・回腸内に,肛門側では結腸内に位置し,インフュージョン法を用いてスリーブおよびサイドホールから検出される内圧を計測した.この状態で30分間,ICJ内圧の変化を記録した.続いて,空嚥下と液体嚥下を5回ずつ施行し,嚥下食道・回腸・ICJ内圧および結腸内圧に与える影響を検討した.(結果)胃癌症例5例(術後4ヶ月から7年)に対して測定を行った.5例中4例において計測時間を通してICJには10-15mmHg(平均11.3mmHg)の高圧帯がみられた.すべての症例において,ICJには間欠的かつ周期的に1分間に4-8回(平均7.1回)の強収縮波群がみられた.回腸からICJ・結腸へと伝播する周期的な強収縮波群が全症例の全収縮波で観察された.5例中ICJが高圧帯を示さなかった1例を含めた4例において,収縮波群の伝播中,ICJはより高い高圧帯を呈した.嚥下にともなう食道の収縮波は全症例において下部食道までしか伝播せず,収縮波の伝播にともなうICJの弛緩反応も認められなかった.(結論)胃全摘後の再建臓器内において,ICJは高圧帯を示し,回腸→ICJ→結腸へと伝播する収縮波群が観察されたが,嚥下にともなうICJの弛緩・収縮反応はみられなかった.回盲部の括約筋としての運動機能は再建臓器内でも損なわれていないものと考えられ,胃全摘後に置換臓器として回・結腸を用いる有用性が確認された.
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