研究概要 |
われわれは,肝細胞癌が肝炎ウイルスcarrier状態(肝炎ウイルスに対する免疫寛容状態)を経て発生・進展することから,その背景には免疫寛容が深く関与しているとの仮説を立て,マウス肝移植モデルを用いた免疫寛容の研究を行ってきた.昨年度には,マウス肝移植モデル(C3H/He→DBA/2)を用いて,donor由来の培養肝癌細胞株(MH134hepatoma cell)を肝移植後14日,28日,42日に経門脈的に投与し,肝癌の成立状況を検討したところ,肝癌の発生・進展における免疫寛容の関与を示した.またわれわれの従来のデータから,マウス肝移植モデルにおいて,肝移植後28日目に免疫寛容のKey mediatorとされるIL-4のモノクローナル抗体を大量(4mg/body)に投与すると,移植肝は生着するが,免疫寛容の誘導は妨げられることが分かっている.そこで今年度は昨年度と同モデルを用いて,肝癌細胞投与と同時期(肝移植後14日,28日,42日)に,抗IL-4モノクローナル抗体11B11(4mg/body)を腹腔内投与し免疫寛容の成立を妨げ,肝癌の成立状況を検討した.その結果,投与群の肝細胞癌結節数は移植後14日投与群では4.5,28日では5.6,42日では6.5とコントロール群と比べて有為に少なかった. 以上の結果は,宿主の免疫寛容を制御することにより肝癌の発生・進展が抑制されることを示し,肝癌の治療において免疫寛容制御療法は新たな治療法となる可能性を示した.
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