研究概要 |
1.臨床検討 大腸癌および食道癌を用いた臨床例の検討で,癌細胞のVEGF発現や内皮細胞の受容体KDR発現は血管新生と関連し,予後規定因子であることが示された.また,血管内皮細胞に発現するETS-1は腫瘍組織のVEGFやPyNPaseと関連することやETS-1発現が独立した予後因子になることが明らかとなり,ETS-1は腫瘍血管新生における重要な分子であること,さらに抗血管新生療法における標的分子となる可能性が臨床レベルで確認された. 2.ETS-1により血管内皮細胞に誘導される血管新生関連遺伝子の解析 血管内皮細胞(HOMEC)をbFGFで刺激するとETS-1 mRNAおよび蛋白が発現した.ets-1アンチセンスオリゴヌクレオシドによりその発現はほぼ抑制された.differential display(DD)の結果,ETS-1発現細胞には非発現細胞にみられない数種類のPCR産物が認められ,クローニング後の塩基配列よりu-PA, MMP-1,さらに熱ショック蛋白gp96遺伝子と確認された.ウェスタンブロットによりbFGFで刺激したHOMECではこれら蛋白の産生増強が確認された.血管新生因子bFGFは血管内皮細胞に対し転写因子ETS-1を介してu-PAやMMPなど血管新生関連分子を産生誘導することが示唆された. (結語) 腫瘍血管内皮細胞に発現するETS-1は抗血管新生療法における分子標的となる可能性がしさされた.ETS-1により誘導されるストレス蛋白gp96の血管内皮細胞における意義,とくに血管新生との関連については今後の課題である.
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