研究概要 |
【目的】悪性グリオーマの手術では全摘が望ましいが、肉眼や手術顕微鏡のみでは腫瘍境界が不明瞭なため意図せずして取り残す場合がある。腫瘍選択的取り込みのある光感受性物質5-ALA(5-aminolevulinic acid)は、腫瘍細胞内で代謝され、violet lightで蛍光を発するprotoporphyin IXになる。本研究では、早い代謝のため光過敏症の副作用が少ないこの薬剤の術中脳腫瘍蛍光造影剤としての可能性につき基礎的検討を行った。【方法】1.C6グリオーマ細胞株を用いin vitroの実験を行った。Subconfiuyenceの状態の培養細胞に5-ALAを0-10mMの濃度で添加し、LSM-GB200側立型共焦点レーザー走査顕微鏡を用い、経時的に細胞内への取り込みを細胞内蛍光の変化で観察した。2.C6グリオーマ細胞を移植したラット脳腫瘍モデルを用いin vivoの実験を行った。Wister ratに1×106個のC6グリオーマ細胞を比較的脳表近くに移植し、2週間後に実験に用いた。腹腔内または尾静脈から0,60mg/kg body weight濃度の5-ALAを投与し、経時的に脳腫瘍を露出後、励起フィルター(violet light 作成用)と濾過フィルターを装着した手術顕微鏡下にキセノン光源を用い蛍光観察を行った。3.蛍光観察後摘出した凍結標本から切片を作成し,LSM-GB200側立型共焦点レーザー走査顕微鏡を用いて蛍光像の観察を行った。【結果】1.数十分後より用量依存的に胞体を中心に強い蛍光像が得られた。2.5-ALA投与後1-2時間で強い腫瘍蛍光像が得られ、その後数時間は有効蛍光像が持続した。蛍光強度は用量依存的で、静注の方が早く造彰された。毒性は認めなかった。3.腫瘍細胞のみ蛍光が観察され、この薬剤がグリオーマ細胞に選択的に取り込まれることが確認された。【結論】5-ALAは悪性グリオーマの手術における術中脳腫瘍蛍光造影剤として有用と思われた。【今後の計画】光化学療法としての効果も有するか検討したい。
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