研究概要 |
鉄イオン脳内投与による外傷性てんかん実験モデルを使用した研究の結果、外傷性てんかん焦点形成に際して活性酸素種が関与することが明らかとなった。このため本研究では、活性酸素消去剤を鉄イオン注入後長期間に渡り投与し、発作脳波出現などを予防できるか否かを検討した。この結果,以下の成果を得た. 1.EPC-K1(ビタミンCとビタミンEの燐酸ジエステル)は鉄イオンによる細胞膜の酸化を抑制することを明らかにした. 2.鉄イオンを注入し6月後の発作脳波活動の出現は、EPC-K1含有飼料で飼育すると少なく,EPC-k1には発作波誘発阻害作用のあることを明らかにした。 3.鉄イオンを注入した後2-塩化アデノシン(Cl-Ado)含有水で飼育しても発作脳波活動発現率及び酸化物量に変化は認められなかった.また,Cl-Ado含有水で飼育した約33%のラット脳波には発作脳波活動が出現した.これはCl-Adoが外傷性てんかん焦点形成の予防には不適であることを示唆する. 4.メラトニン(Mela)含有水で飼育したラットの飲水量は少なかったが,鉄イオン注入後Mela含有水で飼育したラットの発作脳波活動発現率は有意に低く,Melaには発作波誘発阻害作用のあることが明らかとなった。 以上のごとく、平成10〜12年度にわたる3年間の研究により,ある種の活性酸素消去剤は鉄イオン注入によるけいれん発作焦点の形成を予防できることを明らかにした.活性酸素種は頭部外傷のみならず、脳内血腫や脳梗塞時などでも脳内で生成され、脳浮腫などの形成に関与している。このため、本研究は外傷性てんかん発症予防の道を明らかにしたばかりでなく、脳内血腫などで起こる脳浮腫の予防や治療を考える上にも重要である。
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