1.巨大脳底動脈瘤に対する脳底動脈閉塞術の治療効果の予測 (1)脳底動脈閉塞術にともなう瘤内血流停滞効果は、脳底動脈の閉塞部と、左右の後交通動脈の内径比に依存した。 (2)臨床的に施行される機会が多い上小脳動脈中枢側における閉塞では、内径比が0.70以上で半減期が著しく増加した。また臨床のデータは本モデル研究の予測値と大略一致し、その妥当性が示された。 (3)治療効果が期待できない内径比の小さい症例の場合には、後大脳動脈P1部を閉塞させたり、バイパス路を設置することで、治療効果を高めることができることを示した。 2.内剄動脈彎曲部動脈瘤の流体モデルを用いた血行動態の研究 (1)半減期を指標に検討した瘤内血流停滞の程度は動脈瘤の位置およびサイホン角度に依存した。サイホン角度が増加すると、C2部動脈瘤の半減期は増加し、 C3部動脈瘤は減少し、 C2-C3移行部動脈瘤はほぼ一定の低い値を示した。これは、流れの速流成分がサイホン部外周壁に衝突する位置が変化するためと考えられた。 (2)動脈瘤の増大・破裂やコイル塞栓術後の再発傾向が、動脈瘤の位置およびサイホン角度に依存する可能性が示唆され、未破裂動脈瘤の経過観察の際に考慮すべきと考えられた。 3.血行動態変化にともなう血管壁のリモデリングの検討 (1)治療的脳底動脈閉塞術では、動脈分岐部が合流部に変化し血行状態や形態変化が出現すると予想される。40匹のラットの頸部総頚動脈の心臓側を外頸静脈に端々吻合して血行動態を変化させた。 (2)吻合により総頚動脈分岐部は合流部に変化し、血流は+10cm/secから-30cm/secに変化し、血流波形も定常流に類似した。2週後から閉塞例が増加し、一年後の開存例は得られなかった。 (3)血流増加による内皮増殖が細い血管腔を閉塞した可能性が高く、次回は血管径の大きな動物種を選択する必要があると考えられた。
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