研究概要 |
我々はラットにおいて中枢との連続性のない坐骨神経の遠位切断端に胎児脊髄を移植することにより,運動単位を再建できることを観察した。この運動単位を中枢性に制御する問題について,新たな実験モデルを作成し検討した。実験モデル作成について、麻酔下に成熟ラット坐骨神経を近位から末梢まで展開した。神経最中枢側を切断し、末梢神経側を15mm切除した。その神経欠損間に同種静脈を移植し、静脈内に胎生14日日の胎児脊髄を注入した。約3〜6か月飼育し再び坐骨神経近位部から胎児脊髄移植部およびその神経末梢までを展開した。電気生理的解析として、脊髄移植部を含み坐骨神経全域を電気刺激することにより、末梢筋より誘発筋活動電位を導出した。坐骨神経遠位部および返位部の電気刺激により末梢筋より誘発筋電位を記録できたケースと遠位部の電気刺激によってのみ誘発筋電位を記録できたケースがあった。次に,前脛骨筋と腓腹筋にコレラトキシンB(CTB)を注入し,逆行性色素標識で脊髄移植部及び脊髄膨大部を観察した。この解析では,CTB陽性細胞は脊髄移植部と脊髄膨大部に認められた。このCTB陽性細胞は脊髄移植部に多かった。すなわち、筋は移植脊髄に支配されるものと本来の脊髄に支配されているものの2種類あることが考えられた。また電気生理学的解析において、中枢からの電気刺激が脊髄移植部で伝導に何らかの干渉を受けることが推察された。結論として再建した運動単位と上位中枢において何らかの連絡が形成されたと考えられた。
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