研究課題/領域番号 |
10671340
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
整形外科学
|
研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
井田 英雄 (2000) 山形大学, 医学部, 助教授 (40184600)
福島 重宣 (1998-1999) 山形大学, 医学部, 助手 (10261695)
|
研究分担者 |
石川 朗 山形大学, 附属病院, 講師 (60250932)
荻野 利彦 山形大学, 医学部, 教授 (60109436)
高木 理彰 山形大学, 附属病院, 助教授 (40241707)
福島 重宣 山形大学, 附属病院, 助手 (10261695)
井田 英雄 山形大学, 医学部, 助教授 (40184600)
|
研究期間 (年度) |
1998 – 2000
|
研究課題ステータス |
完了 (2000年度)
|
配分額 *注記 |
3,400千円 (直接経費: 3,400千円)
2000年度: 500千円 (直接経費: 500千円)
1999年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
1998年度: 2,100千円 (直接経費: 2,100千円)
|
キーワード | Impaction / 骨再造形 / 骨溶解(オステオライシス) / 人工股関節手術 / 再置換術 |
研究概要 |
A)ラット圧詰式同種骨移植モデル:1)骨染色:エタノール前固定は、0時間、12時間、24時間に分けて固定し、3日、5日、7日間のVillanueva骨染色をそれぞれ行った。石灰化骨、低石灰化骨、類骨の染色性は、エタノール固定なしで、3日間のVillanueva骨染色で十分な染色性が得られた。この条件設定で以後の硬組織学的評価を行った。2)骨標職:カルセインの骨標識では、緑色の十分な標識が得られなかった。一方、テトラサイクリンでは、黄色〜黄緑色の観察に至適な標識像が得られた。標識時期は、骨組織摘出6日、3日前の標識が最も観察に適していた。この条件設定で以後の硬組織学的評価を行った。3)骨形態観察:インプラント(鋼線ピン)周囲の圧詰骨は、一部は、術後1〜2週目で新生血管と思われる構造物に囲まれ、また、圧詰骨の吸収と添加性の骨形成が観察された。圧詰骨は、橙色の低石灰化骨として観察された。この変化は、インプラント近傍では起こらず、皮質骨と接した部分で観察された。術後4週、8週で、この添加性の骨形成はさらに促進された。しかしながら、添加性の骨形成、改変の程度は緩徐で、術後8週でも観察された。完全な骨の改変所見は得られなかった。膝関節近傍のインプラン卜・骨境界面では、関節包からの肉芽組織の侵入が観察された。この侵入に伴って骨形成領域の低下が観察された。4)マイクロレントゲングラムによる観察:術後1週、2週、4週、8週とすすむにつれて、圧詰骨の透亮性が低下する傾向が認められた。しかしながら、骨再造形を示唆する骨梁構造の出現や骨硬化性の変化は認められなかった。 B)人工股関節周囲における圧詰式同種骨移植の骨再造形の評価:1).弛緩人工股関節の骨動態:弛緩人工股関節組織の骨動態は、対照群と比較して、弛緩人工股関節周囲骨組織では、成熟石灰化骨量の有意な減少とともに、低石灰化骨量、類骨量、類骨面、吸収面、破骨細胞面、骨石灰化面の増加と、骨石灰化速度の亢進が観察された。2)大腿骨同種骨圧詰後の硬組織の解折:弛緩臼蓋再建術時に36ヶ月前に加温滅菌処理後、細片化した同種骨を用い、インパクション法により再建した大腿骨コンポーネントの周囲の骨組織を生検し、蛍光顕微鏡・微分干渉顕微鏡下に観察した。細片化同種骨を移植した部位では、皮質骨に近い部分で、骨細胞が存在する骨組織として観察され、Villanueva骨染色により、緑色の成熟した石化骨として観察さた。インプラントに近接した部分では、骨細胞を含む骨組織と細胞成分に乏しい組織の混在が認められたが、一部は骨細胞の存在しない低石灰化骨が観察された。 動物モデルにおいては、骨改変性の所見が認められたが、その改変が緩徐であり、モデルとしての改良がさらに必要であると思われた。従って、当初予定していた、bone morphogenic proteinやtransforming growth factor-betaの添加実験には至れず、硬組織の形態学的観察に留まった。一方、これらの動物実験で得られた硬組織に関する知見から、ヒト臨床例の硬組織形態計測につながる解析を行うことが出来た。弛緩人工股関節周囲骨組織では、周囲肉芽組織と関連した破骨細胞性の骨吸収と骨形成性の反応が共存する高回転型の骨代謝と石灰化不全が存在し、これが人工股関節 周囲組織の脆弱化と弛みに関与する可能性があると思われた。人工股関節の弛みの病態には、インプラントの材質、バイオメカニクス、摩耗粉等による骨・インプラント境界面での肉芽組織の形成に連動した人工股関節周囲の骨質や骨動態が病的骨吸収(オステオライシス)に深く関与するものと思われた。このように、弛緩人工股関節周囲の骨動態の特質は、高回転型の骨代謝と石灰化不全として捉えることができた。
|