研究概要 |
変形性関節症の発症には機械的ストレスが重要な働きをする.我々はこの機序を検討するため家兎に実験的関節症を作成し,細胞内転写調節因子であるc-fosやその調節因子であるプロテインキナーゼC(PKC)が発現することを明らかにした.同じ頃にこの実験モデルを使用して,軟骨変性にフリーラジカルの関与を示唆する知見を得た.これらの平成10年度の主にin vivoで得られた実験結果より,PKC・c-fos遺伝子カスケードをフリーラジカルの側面より検討することとした. 平成11年度はこの現象をより詳細に検討することを目的に,in vitroでの検討を行った.培養細胞に周期的牽引負荷を加え,PKC・c-fos遺伝子カスケードの上流に位置するGTP結合蛋白質と一酸化窒素(NO)の関係に注目した.機械的ストレスによりNOは二相性の反応を示し,その調節因子としてGiが関与することを見いだした.また過酸化水素が軟骨細胞のアポトーシスを誘導し,この機構にPKC・c-fos遺伝子カスケードの上流に位置するmitogen activated protein kinase(MAPK)が関与することを見いだし報告した. 平成12年度はさらに詳細なin vitroの検討を行った.アポトーシスの誘導にはこMAPKの中でもERKが重要であることを報告した.また機械的ストレスによるNOの抑制については,G蛋白とともに細胞内骨格も関与することを報告した. これらの結果より,機械的ストレスの細胞応答として,なんらかの受容体がその刺激を感受し,その情報をMAPK・PKC・c-fos遺伝子・細胞内カルシウムを介して変換していることが示唆された.このような情報伝達機構にGTP結合蛋白質・細胞内骨格・フリーラジカルが関与し,軟骨変性の過程を調節していることが明らかにされた.
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