研究概要 |
脊髄および全脳障害が自律神経活動に及ぼす影響と,全脳障害時に脊髄が心臓自律神経活動に与える影響を調べる目的で,白色日本家兎を対象に実験的研究を行った.また左右別換気が心臓自律神経活動に与える影響も併せて研究し,換気と心拍変動と血圧という3者の関連性についてインパルスレスポンスを解析した. 対象動物を脊髄切断群と全脳損傷群の2群に分け,心電図と動脈圧,および脳波のパワースペクトルを測定解析した.心電図と動脈圧は測定後にオフラインでパワースペクトルとインパルスレスポンスを解析した.心拍変動と血圧変動の解析とインパルスレスポンスの解析に用いたコンピュータプログラムはいずれも独自開発した.自律神経活動の指標はパワースペクトル上の高周波帯域と低周波帯域の比とした. また換気の影響については,対象動物を左のみの換気を行った群と右の換気を行った群の2群に分け,心電図と動脈圧,および脳波のパワースペクトルを測定解析した. その結果,脊髄切断により心拍数は低下し,動脈圧からみた自律神経バランスは高値に傾ことが明らかになった.全脳損傷では心拍の自律神経バランスは抑制され,心拍の動脈圧に対するインパルスレスポンスの最大変化は脊髄切断の状態以上に著しいことが判明した.また換気によって受ける影響は左側の換気の方が影響が大きく,解剖学的な差違による物理的な影響と考えられた. 以上より,心拍変動は主として脳-脳幹により制御され動脈圧変動は脊髄を介して制御されているが,全脳損傷時には動脈圧変動は脊髄を介して心拍変動によって制御されていることが判明した. またこうしたコンピュータプログラムを用いた解析手法は,脊髄切断後に生ずる交感神経性過敏反応の病態を解析する上で有用であると考えられた.今後の臨床応用への可能性が示唆される.
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