研究概要 |
脊髄NMDA受容体活性化によりNO/cGMP経路が作動し,その結果,グルタミン酸が放出され,脊髄侵害情報伝達を修飾しているという仮説を検証するために、脊髄NMDA受容体を活性化中の髄液中NO代謝産物とグルタミン酸,脊髄後角組織のcGMP含有量を測定し、同時に疼痛関連行動を評価した.さらに,これらに対するNOS阻害薬とsGC阻害薬の効果を検討した. U字ループ型微小透析用プローぶを作製し、雄SDラットの第4・5腰椎椎間より透析部分が脊髄腰部膨大部に位置されるようにプローブをくも膜下腔に挿入・留置した.ラットを自由行動させながら実験を行った.疼痛関連行動は強さと時間で評価した.NMDAを微小透析プローブより10分間潅流投与し,回収液中のグルタミン酸,NO_2/NO_3を高速液体クロマトグラフィー法により経時的に測定し,同時に,疼痛関連行動を評価した.NOS阻害薬であるL-NMMAおよびsGC阻害薬であるODQのNMDA1.0mM誘起性グルタミン酸放出・疼痛関連行動に及ぼす作用を検討した.また,腰部脊髄膨大部後角部分を取り出し,免疫酵素法によりcGMPを測定した.L-NMMAのNMDA誘起性cGMP上昇に及ぼす作用の検討も行った. NMDA投与により回収液中のグルタミン酸,NO_2/NO_3濃度は用量依存性に増加した.用量依存性に疼痛関連行動を増強した.L-NMMA,ODQによりNMDA誘起性グルタミン酸濃度上昇,疼痛関連行動は有意に抑制された.また,L-NMMAはNMDA誘起性NO_2/NO_3濃度上昇を完全に抑制した.NMDA投与により脊髄後角のcGMP含有量は有意に上昇した.L-NMMAはNMDA誘起性cGMP上昇を有意に抑制した. 本研究により,脊髄NMDA受容体の活性化によりNO/cyclic GMP/グルタミン酸放出カスケードが作動し,侵害情報伝達が促進されることが明らかとなった.
|