研究概要 |
1.モルモット摘出拍動心モデルにおいて、佐室圧および細胞内Ca^<2+>濃度におけるモルヒネの影響を検討し,さらに,κ,δ_1およびδ_2各オピオイド受容体拮抗薬を用いて,モルヒネの直接的な心作用に対して、どの受容体が主に関与しているかを検討した.モルヒネ(1μM)は,心筋のCa^<2+>感受性を増強させることで、心収縮に有効な細胞内Ca^<2+>濃度の減少にもかかわらず,心収縮力を維持した.モルヒネによる細胞内Ca^<2+>濃度の減少は,主に,κではなく,δ_1およびδ_2受容体を介する作用であることが示唆された. 2. δ_1およびδ_2オピオイド作用薬の直接心作用について検討した.δ_1δオピオイド作用薬(TAN-67,1μM)は,左室圧および細胞内Ca^<2+>濃度をともに減少させたが,δ_2作用薬(Deltorpine,1μM)は、左室圧ではなく,細胞内Ca^<2+>濃度を有意に減少させた.これらの作用は,δ_1およびδ_2拮抗薬によりそれぞれ抑制された.また,δ_1およびδ_2作用薬は、左室圧および細胞内Ca^<2+>濃度の関係曲線を有意に左方へ移動させ,心筋のCa^<2+>感受性を増強させた. 3. オピオイドの研究と平行して,静脈麻酔薬であるプロポフォールについても,同様に検討した.プロポフォールは,生理的条件下の臨床適正血中濃度において,心収縮に有効な細胞内Ca^<2+>濃度の減少にもかかわらず,心筋のCa^<2+>感受性を増強させることで,心収縮力を維持した.また,プロポフォールによる有効な細胞内Ca^<2+>濃度の減少は,主に,L型Ca^<2+>チャネルを介したCa^<2+>流入の減少よりはむしろ,筋小胞体におけるCa^<2+>動員の抑制によると考えられた.
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