研究概要 |
市販の貼付用局所麻酔剤ペンレスTMは,鎮痛強度,持続時間が不足するため,帯状庖疹後神経痛(以下,PHNと略)やcomplex regional pain syndrome(以下,CRPSと略)などのアロディニア対策としての使用は難しい.先に開発した10%リドカイン水性ゲル(以下,L-ゲルと略)は,各施設で臨床応用されているが,L-ゲルは長時間連続貼付時に皮膚発赤,表皮剥離が問題となることがある.今回我々はL-ゲルと共に,アミド型局所麻酔剤を使用した10%ジブカインゲル(以下,D-ゲルと略)を用いて臨床応用を試みた. (1)基礎実験:健康なボランティアを対象として,擦過傷のない片側前腕にL-ゲル・D-ゲルをそれぞれ約0.3gを塗布した.1)pin-prick testによりanesthesia発現時間を測定した.両ゲルともに60〜90分を要した.2)テガダームTM貼付を2,5,12,24時間に設定した.除去後の効果持続,表皮の変化を測定した.両ゲルとも除去60分までは知覚低下(5/10以下)が持続した.除去時の表皮の状態は異なっていた(L-ゲル;表面凹凸のある白い隆起面,D-ゲル;薄い紅斑).L-ゲル除去後,表皮剥離が認められた. (2)臨床応用:12症例(PHN8,CRPS 4)のアロディニア改善を目的にL-ゲル(6)・D-ゲル(10)を患部に貼付した.12症例中4例(PHN 2,CRPS 2)は,時期を変えて両ゲルを使用し同一症例で比較した.貼付中アロディニアが半減したのは,L-ゲル2例(2/6),D-ゲル8例(8/10)であった.両ゲルを使用した4例のうち,2例(PHN 1,CRPS 1)はD-ゲル使用時のみアロディニアが半減した.1例(PHN)は鎮痛効果に差は無かったが,L-ゲル使用後水庖形成を生じ使用中止した.他の1例(CRPS)は共に無効であった.貼付後の発赤,表皮剥離,色素沈着は両ゲルともに認められた. 結論:L-ゲルよりも,D-ゲルの方がアロディニア改善に有用と思われた.
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