研究概要 |
ラット膀胱癌細胞株NBT-IIから分離された5種類の亜株(NBT-T1,T2,L1,L2a,L2b)のうち、in vitroで高い浸潤能を示すL系の細胞(NBT-L1、L2a、L2b)においてE-cadherin含量の低下と、conditioned medium中のepithelin precursor(autocrine growth modulator)量の増加が認められ、これがL系細胞の浸潤能の増大と密接に関連している可能性が示唆された。NBT-II亜株におけるepithelin precursorの発現をノーザンブロットで調べた結果、L系細胞のepithelin precursor mRNA量はN系細胞の2-4倍に増加していた。NBT-II亜株に対するepithelinの作用を調べる目的で、GST-fusion systemを用いて組み換え型epithelin precursor、epithelin1&2(epithelin precursorのプロセッシングにより生じる低分子量型のgorwth modulator)を作製し、その作用を調べた。epithelin precursorはinclusion bodyを形成しやすく、純度の高い標品を十分量得ることが困難であった。部分精製したepithelin precursorはL系細胞のscatteringと増殖(培地中の血清濃度が低い条件下)を促進したが、作用発現には比較的高い濃度を必要とした。epithelin precursorはN系細胞のscattering、増殖に対して影響を与えなかった。epithelin1,2は、今回調べた条件下ではL系、N系いずれの細胞に対しても明らかな作用を示さなかった。高純度、高比活性の組み換え型蛋白質を再現性よく作製できることがepithelinの生理作用を検討する上で重要なため、発現ベクター、発現条件の詳細な検討を行った。その結果、今回調べた大腸菌を用いた発現系では、いずれも満足できる標品が得られなかったため、今後、真核細胞での発現を検討する必要があると考えられる。
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