研究概要 |
前立腺癌,膀胱癌,腎細胞癌などの尿路悪性腫瘍は年々増加傾向にあり,高齢化社会における問題となっている.これら尿路悪性腫瘍の発生・進展に関連するがん関連遺伝子の異常や蛋白質の発現については未だ不明である.われわれは,前立腺癌におけるBRCA1遺伝子の異常と染色体17p13領域のloss of heterozygosityについて検討した.本遺伝子は,主に乳癌の発生に関連すると言われている.乳癌および前立腺癌では性ホルモンがその発生・進展に関連するとされ,乳癌が発生した家族では前立腺癌の発生率が高いと報告されている.しかし,われわれの検討では前立腺癌におけるBRCA1遺伝子の異常は24例中1例(4.2%),染色体17p13領域のLOHは24例中4例(16.7%)であり,BRCA1遺伝子の前立腺癌の発生における関与は少ないと考えられた.膀胱癌におけるp53遺伝子異常とp53蛋白の相関性について検討したところ,p53蛋白陽性は87例中50例(57.5%)に認められた.p53遺伝子の異常と蛋白の発現は高い相関を示したが,p53蛋白陽性の50例中24例にp53遺伝子異常は認められなかった.また他の臨床的なパラメーターと予後との関連について比較したところ,悪性度,侵純度とp53遺伝子異常がよく相関していた(p<0.05-0.001).また;101例の腎細胞癌におけるp53,mdm2,bcl-2蛋白の発現の有無について免疫組織学的に検討したところ,それぞれ27例(26.7%),10例(9.9%),46例_(45.5%)が陽性であった.他の臨床的なパラメーターと予後との関連について多変量解析を用いて比較したところ,浸潤度,p53蛋白陽性,p53/mdm2蛋白陽性がよく相関していた(p<0.01). これらの癌関連遺伝子・蛋白の解析は今後の臨床に役立つものと考えられる.
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