研究概要 |
研究期間において、ヒト腎細胞癌由来培養細胞株の樹立に成功した。本細胞株は各種サイトカインを産生しかつ、interleukin-6(IL-6)granulocyte macrophage-colony stimulating factor(GM-CSF)により自己増殖促進作用すなわちautocrine growthを示す細胞であり本研究遂行にあたり、その標的細胞として極めて有用なモデルとなった(Cell & Tissue Res., In press) また、膀胱癌細胞においても各種サイトカインを産生することが明かとなり、特に、granulocyte-colony stimulating factor(G-CSF)は細胞の増殖に関与し、pracrine, autocrine growthをしている可能性が示唆された(Cytokines, Cellular & Tissue Res., In press)。 さらに、膀胱癌は同一の組織型であってもその予後に著しいvariationが存在することより、膀胱癌組織の核DNA含量をフローサイトメトリーにて解析すると、217例の表在性膀胱癌症例における検討では、DNA-aneuploidyを示した症例の予後が著しく不良であった(Cancer Detection and Prevention, 23: 155-162, 1999)。 一方、DU-145,PC-3の2種類の前立腺癌細胞におけるtumor necrosis factor (TNF)による殺細胞性はNF kappa B(NFκB)のデコイにより阻害されることが示され、細胞におけるNFκBの活性がTNF-αによる殺細胞性と密接に関連することが明らかとなった。 次に各種サイトカイン産生膀胱癌細胞に対し、NFκ-Bの拮抗物質である1κBをアデノウイルスベクターにより細胞内に移入すると、サイトカイン産生が著明に抑制されると共に、apotosisが誘導させることが判明した(Human Gene Terapy, 10: 37-47, 1999)。 各種サイトカイン産生腫瘍細胞のける、interleuki-1(IL-1)に対する影響を検討すると、interleukin-1βconverting enzyme(ICE)の遺伝子発現とIL-1の殺細胞性に密接な関連が見い出され、IL-1 receptor antagonistの細胞移入によりIL-1の細胞障害性が著しく亢進した。 さらに臨床においては前立腺癌患者の血清tumor necrosis factor (TNF)の活性を測定すると、血清TNF値の高い症例での癌悪液質が高度であり、予後は不良であることが予想された(Clinical Cancer Research, 4: 1743-1748, 1998)。 以上の結果は癌の増殖・進展にサイトカインが密接に関連しており、サイトカイン産生における転写因子の一つであるNFκBの抑制が細胞のapotosis誘導に寄与する可能性が示されたものと考えられる。
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