研究概要 |
リンパ球遊走を制御する新しい免疫抑制剤、FTY720の移植腎生着効果ならびにこの作用機序を本研究で検討した。実験動物としてドナーとして雄性Brown-Norwayラット,レシピエントとして雄性Lewisラットを用いた。両者間のリンパ球混合培養では、FTY720はこの抗原刺激反応性にまったく影響をあたえなかったが、in vivoの腎移植実験では、FTY720の投与にて移植腎生着は有意に延長した。興味深い事には、移植前投与でこの生着延長効果が著明に表れた。FTY720投与によるラット末梢血の細胞分画を検討するに、末梢血リンパ球のみが特異的に著明に減少し、CD4、CD8リンパ球とも同じ減少効果が表れた。そして移植腎の組織学検討するに、浸潤細胞の減少特にリンパ球の減少が見られた。これをRT-PCRで検討するに、IL-2産出の抑制がみられ、移植腎内のリンパ球増殖をともなう拒絶反応が結果的に抑制されたものと考えられた。ラットのリンパ節、脾臓を検討するに、リンパ節では、リンパ球細胞の増殖傾向がみられたが、脾臓では、逆に減少傾向が見られた。これらの事より、FTY720は移植腎を含めた末梢血循環からのリンパ球のホーミングを促進し、移植腎の生着を延長させるもものと考えられた。このためホーミングレセプターのL-セレクチンおよびE-セレクチンへのFTY720の影響をin vitroで検討したが有意な結果は得らず、引き続き検討中である。
|