研究概要 |
ほとんどの粘膜型HPVを検出できるLCR-E7PCR法を開発した。この方法により日本におけるHPV感染の頻度、癌発生に関与するタイプのHPVの感染パターンを明らかにした。子宮頚部細胞に変化を認めないHPVの感染初期(細胞診正常、コンジローマ、LSIL(Low-grade squamous intraepithelial lesions))の女性では、17種類以上のHPVが単独または混合感染しており、特に混合感染が高頻度にみられたが、HSIL(Hitgh-grade squamous intraepithelial neoplasia)や子宮頚癌では混合感染の頻度は減少し、単独感染として検出されることが多かった。HPV16,18,31,33,51,52,56,58はこれらの悪性病変で検出されたためハイリスク型と考えられる。日本の子宮頚癌では、欧米に比べてHPV18,33,56型は少なく、HPV51,52,58型が多い傾向を示した。 HLA classII抗原型との相関を調べたところ、HLA DR3,4の女性はHPV感染が成立し易く,HLA DR2,3,4,5またはDR2-DQw1,DR3-DQw2,DR5-DQw3 haplotypeは子宮頚癌の発症と相関していた。またHPV16DNA陽性でHLA DR2,3,4,5の女性は、それ以外のHLAタイプ群に比べてHPV16ウイルス抗体価が上昇していた。これらのHLA型の女性では、HPV感染後にTh2HelperT細胞の活性化が有意となりB細胞を刺激して抗体産生が誘導されるが、逆にTh1 Helperは抑制されている可能性が示唆された。そこで、このことを証明するために、頚癌組織中のTh1型サイトカイン(IL2,γ-INF)、Th2型サイトカイン(IL4,IL5)の発現を免疫染色により検査したが、特徴的な変化は今のところ見いだせていない。
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