研究概要 |
1.新生仔ラットの低酸素性虚血性脳障害モデルを用い,90分間連続負荷と,10分間負荷10分間間欠の9回繰り返しの反復負荷の2法を行い低酸素虚血ストレスに対する反応を観察した.まず,低酸素虚血負荷中の脳血流量動態と一酸化窒素(NO)の動態を調べた.脳血流量はいずれの方法でも,虚血側において負荷開始後,前値の30%まで減少した.負荷終了後には直ちに脳血流量は前値に復した.NOは負荷中血流量の低下に応じて発生したが,間欠期に血流量が回復してもなお発生がみられた.負荷終了後の回復期にもNO発生の再上昇がみられ,脳障害発生との関与が示唆された. 2.低酸素虚血負荷による,inducible nitric oxide synthase(iNOS)およびNOとO_2との反応産物であるperoxynitrite発生を検討した.またiNOSの選択的阻害剤であるS-methyl-isothiourea sulfate(SMT)を腹腔内投与し,障害発生の程度とperoxynitrite発生の指標となる3-nitrotyrosine(NT)発現の観察を行った.負荷6-36時間後にiNOSmRNAの発現が,負荷12-48時間後にiNOS蛋白の発現が観察された.NTは虚血側優位に発現し,48時間で最大となった.また,SMT投与により虚血側脳梗塞巣は有意に減少し,NTの発現は抑制された. 3.さらに1回目の負荷後にさまざまな時間感覚で反復負荷を行ったところ,iNOS活性の上昇した時間における反復負荷によって障害は拡大し,一方で,iNOS阻害剤の投与により障害拡大が抑制された.これらの成績より,周生期未熟脳において,低酸素虚血負荷によるiNOSの発現とperoxynitrite産生亢進が脳障害増悪に関与する事が示唆された.
|