研究概要 |
周産期医療の進歩に伴い,胎児診断および周産期管理がより早期から行われるようになったが,現在でも胎児肺低形成はその診断および管理に苦慮する疾患である。肺低形成は肺の発育異常に起因する疾患であり,この原因として,胸郭外圧迫(羊水過少など),胸郭内圧迫(先天性横隔膜ヘルニア,胸水など)および呼吸様運動の欠如が考えられている。 胎児肺発育成長因子(特にEGF)の影響について,ヒト胎児肺(肺低形成群および正常発育群)を用いて免疫染色により比較検討した。その結果,肺低形成群では正常発育群に比し,EGFRの発現が有意に低下しており,胎児肺発育におけるEGFの関与が示唆された。 また,家兎胎仔における実験では,羊水過少(シャント形成)により肺低形成を誘導した胎仔の腹腔内にEGFを投与することにより,肺低形成が抑制され,さらに肺成熟が促進していた。 以上により,EGFが胎児肺発育および肺成熟に関与している可能性が示唆された。これらはEarly human developmentに投稿し,受理された(Early Human Development 2000;57:61-69)。 現在EGF以外の因子(HGFおよびGRP)のヒト肺発育に与える影響に関する検討も終了し,投稿した(ACTA MEDICA NAGASAKIENSIA 2000;45:61-66)。
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