研究概要 |
目的 HIV感染妊婦における胎児,新生児に対する垂直感染の予防は人類保健上重要な課題の一つである.国連エイズ委員会の推定では1999年1年間だけでも全世界で57万人の小児がエイズに感染しその大部分は母子感染によるとされている。十分な治療を受けられる日本においても一定の確率で子宮内感染を生じる一方,無治療の発展途上国でも必ずしも全症例に垂直感染を来すわけではない。本研究では HIV母児感染機構について感染妊婦と新生児の血液,胎盤を臨床病理学的に検討し,あわせて経胎盤感染過程におけるCD4非依存的なHIVの感染機構の検討をおこなった。 結果 1 HIV感染妊婦胎盤に特異的な所見はないがHIVp24が染色される症例がある 2 抗原性によって分離した 絨毛細胞,Hofbauer細胞にHIV RNAが存在する 3 HIVはCD4非依存的に絨毛癌細胞に感染するがケモカインレセプターは関与する 4 絨毛細胞と脱落膜リンパ球の間にケモカインを介した情報伝達が行われている 5 胎児に感染するHIVは母体に感染したHIVのごく一部である 6 健常新生児臍帯血には健常成人の約10倍濃度のIL-16が存在する 7 新生児臍帯血リンパ球は構成的にIL-16mRNAを発現する 8 IL-16は臍帯血CD4リンパ球に対するHIV感染を濃度依存性に抑制する 9 脱落膜リンパ球はIL-16を産生し局所におけるHIV感染防御に作用している可能性がある 結論 胎盤絨毛は機能的なケモカインレセプターを発現し,ケモカインが増殖や機能をコントロールしている。絨毛細胞に対するHIVの感染はケモカインレヤプターがalternative receptorとして機能しており,胎盤バリアは絨毛細胞と胎児血の間に存在していること。臍帯血中のIL-16は胎児の感染防御に関与している可能性が示唆された。
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