研究分担者 |
大恵 眉美 徳島大学, 薬学部, 教務員
柴田 瑩 徳島大学, 薬学部, 助教授 (40035556)
山下 伸典 兵庫教育大学, 自然系, 教授 (50028180)
伊井 邦雄 日本脳研究所, 副所長 (50035507)
山下 安彦 徳島大学, 医学部付属病院, 助手 (50304530)
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研究概要 |
Hydroxyapatite(HA)と同様に,再建手術の分野で広く使用されているbio-inertな人工耳小骨Bioceramの小円板(Al_2O_3,京セラ,京都)をラットの皮下に埋め込みH&E染色標本を作成し,細胞構成と分布を観察した。Bioceramの皮下組織反応:14日以内に炎症反応は急速に減少した。6ヵ月後には大食細胞とリンパ球は徐々に減少し,16と20カ月後には0%となった。以上の結果より長期の細胞反応という観点からみれば,Bioceramは再建手術の材料として,耳科領域のみならず,関係各領域においても有用であることを示した。 人工耳小骨のApaceram(Ap:Ca_<10>(PO_4)_6(OH)_2,旭光学工業,東京)を生体内に埋め込んだ際の表面構造を長期にわたり観察した。Bioactive ceramicsであるHAを主成分としたApを中耳手術に使用する際の基礎的データを提供することを目的とした。ラットの皮下にAp小円板を理め込み6,14.20ヵ月後に摘出し,理め込んだAp表面を実体顕微鏡,走査型電子顕微鏡(SEM)で製察し,レーザー・ラマン分光光度計を用いて分子レベルで測定した。SEMと実体顕微鏡による観察では,Ap表面は進行性破壌のあと,再沈着を示した。つぎにラマン・スペクトルの比較では,時間の経過とともに脱ミネラルから再結晶へ進行することが証明された.再結晶に関して,Apに接した皮下組織の病理組織学的標本を観察した。Apを取り巻く線維性被膜の幅は時間の縦過とともに厚くなり,コラーゲン(線維細胞)に富んだ組織がApに接していた。このような環境下でイオンの濃縮が起こりAp表面におけるミネラルの再結晶に人きく関与していることが判明した。本実験では1995年に提唱したApモデル(Cell mol Bioll.1995)を病理組織学的に裏付けることとなった。Apではこのように生体内で再結晶が生じるために,ほぽその原型を保つことが出来るので,再建手術に有用であると結論した。 さらに,Ap小円板をラットの中耳骨胞の外側面の骨に接して埋め込んだあと,組織反応を9ヵ月間観察した。その結果,1)中耳骨胞の骨破壊はみられず,2)90日以降は炎症反応は消失し,3)180と270日後にはApは中耳骨胞に接して安定してとどまっていた。以上よりApは中耳再建手術に使用しても満足すべき人工材料で,高度な組織適合性を示した。
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