研究概要 |
当該年度では、嗅覚障害者を対象としてニオイ刺激誘発反応を記録し、その潜時や電位および頭皮上電位分布を求め,嗅覚正常者と比較検討を行った。その結果,得られた知見は以下のごとくであった。 1. 嗅覚正常者におけるニオイ刺激誘発反応は,300msと700msに2つの陽性波(P1, P2)が記録された。一方嗅覚障害者33名にニオイ刺激誘発反応検査を行ったところ,26名は無反応であった。しかし7名は潜時約300msから400msに1つの陽性波が記録された。よって嗅覚障害者から記録されたこの陽性波は嗅神経以外の反応である可能性が示唆された。 2. 嗅覚障害者から記録されたこの陽性波は潜時およびその頭皮上電位分布が嗅覚正常者から記録されたP1と一致することから,同一の起源によるものと推察した。 3. ニオイ物質により,鼻腔内の三叉神経も刺激されることから,このP1および嗅覚障害者から記録された陽性波はニオイ刺激による三叉神経の反応と考察した。 4. 一方嗅覚正常者から記録された潜時700msの反応P2は,嗅覚障害者からは1名も記録されず,これが嗅神経の反応であろうと考えられた。 5. ニオイ物質を鼻腔内に投与すると,同時に三叉神経と嗅神経の2つが刺激され,これによる2つの誘発反応を検討することにより,嗅覚障害者における他覚的嗅覚検査をより詳細に行うことができると思われた。
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