研究概要 |
本研究で,約200家系の角膜変性症患者および約150家系の遺伝性網膜疾患患者より,承諾を得て,原因遺伝子の解析の目的で,染色体DNAを抽出した。各疾患の候補遺伝子の解析を行った結果,以下の大きな成果を得た。1.角膜疾患の遺伝子解析...(1)ケラトエピセリン関連角膜変性症...1997年3月,ケラトエピセリンという蛋白の変異が原因で4つの異なるタイプの角膜変性症がおこると報告された。われわれは本邦の角膜変性症患者92家系を対象としてケラトエピセリンを候補遺伝子として解析を行い,以下の新知見をえた。(1)臨床的に顆粒状角膜変性と診断されていた症例の90%以上が,遺伝子レベルではアベリノ角膜変性の変異を持っていた(Cornea,2000 in press)。(2)格子状角膜変性症III型の原因遺伝子変異を発見した(Am J Hum Genet,1998)。(3)重症型の非定型的な角膜変性症例の中に,血族結婚に起因するホモ接合体が存在することを分子レベルで解析した(Am J Ophthalmol,1998&IOVS,1998)。(4)1917年に報告されたオリジナルタイプのReis-Buckler's角膜変性症の原因遺伝子変異を発見した(Am J Ophthalmol,1998)。...(2)膠様滴状角膜変性症...膠様滴状角膜変性症は,日本人特有の最も重篤な角膜変性症である。我々は,この変性症の原因遺伝子座が,第一染色体短腕に存在することを発見し(Am J Hum Genet 1998),原因遺伝子がMISTであることを,発見した(Net Genet,1999)。初期病変の確定診断や将来の遺伝子治療に有用であると考えられた。2.遺伝性網膜疾患の原因遺伝子解析...(1)X連鎖性若年性網膜分離症は,車軸状の黄斑分離や周辺部の網膜剥離をおこす遺伝性網膜ジストロフィで,若年より視力低下を来す疾患である。8家系の遺伝子解析を行い,全家系で,XLRS1遺伝子上に原因遺伝子変異を同定した(Arch Ophthalmol,2000)。(2)網膜色素変性症については,約100家系の遺伝歴のある家系の染色体DNAを収集することができた。
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