研究概要 |
細胞内2次メッセンジャーである細胞内カルシウム濃度([Ca^<2+>]_i)の変化を,細胞内に負荷したCa^<2+>蛍光指示薬の蛍光強度を測定することによって,各種刺激に対する細胞内の反応をリアルタイムに捉えることができる.我々はすでに角膜上皮細胞を用い,神経伝達物質であるサブスタンスPやアデノシン三リン酸(ATP)が[Ca^<2+>]_iに影響することを明らかにした. 平成10年度においては,家兔角膜上皮細胞を用いて研究を行い,これまでの研究結果を更に詳細に検討した.その結果を以下に示す. 1. ATPで角膜上皮細胞を刺激すると,[Ca^<2+>]_iの急峻な立ち上がりの初期相と持続的な高値を示す維持相からなる二相性の変化が観察された.初期相は細胞内Ca^<2+>ストアからの放出が,また,維持相は細胞外からのCa^<2+>の流入が関与していると考えられた. 2. 維持相における細胞外からのCa^<2+>の流入は,細胞膜に存在するP2受容体を介して引き起こされ,さらにP2受容体のサブタイプを検索したところ,P2Y受容体が関与していることが示唆された. 3. 維持相では,角膜上皮細胞層の中間翼細胞層において[Ca^<2+>]_iの律動的な変動が観察され,その変動は近接した細胞間でしばしば同期していたが,他の層へ伝播することはなかった.このことから,角膜上皮細胞の細胞外ATPに対する反応性は,細胞の分化度によって異なると考えられた.
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